土地や家屋を売ったとき、その代金を一度に受け取るとは限りません。むしろ、何回かの分割払いというのが一般的です。そのせいか、悪質な不動産屋にだまされて、残金が回収不能になるケースも後を断ちません。私の依頼人であるJさんも、そんな悪運に見舞われたひとりでした。彼は父親から相続した土地を、ある不動産屋に二〇〇〇万円で売って半金は受けとったのですが、残金をもらう約束の翌年になってみると、相手の不動産屋は倒産して影も形もありません。
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一方、Jさんは土地を売った年の確定申告で譲渡所得があったものとして申告し、所得税はすでに全額を納めていました。したがって、回収不能になった一〇〇〇万円に対する税金を納めすぎていたわけです。私の事務所は、法律会計事務所なので、弁護士と税理士が同居しており、Jさんのような悪運に見舞われた人が、裁判に訴えてでも残金を回収したいと相談にくることも少なくおりません。ところが、税理士として驚くのは、このような場合、収めすぎた税金が戻ってくることをほとんどの人が知らないことです。いかに非情な税法でも、実際になかった所得にまで税金をかけることはできません。税法では、土地・家屋の売却代金の一部が回収不能になり、かつすでに税金を納めている場合、税務署に更正請求書を提出すれば、回収不能分に相当する税金が返ってくることになっています。回収不能金があるとき、この更正請求を忘れたら、まったく損のしっぱなしです。実際に税金がいくら戻ってくるかは、その他の所得によって違いますが、前記のJさんの場合、前年度の給与所得約五五〇万円、納税額約三八三万円に対し、返付金は二〇〇万円でした。だいたいの目安として、納めた税金の半分以上戻ってくると考えていいでしょう。なお、この更正請求は回収不能になった日から二ヵ月以内にしなければならないことになっていますから、早目の手続きが必要です。